Coach's Comment
皆さん日々トレーニングをしていると思いますがトレーニングと食事は密接な関係があります。
特に寒い中でパフォーマンスを出さなければならないスキーも普段の食事が重要になって来ます。
今回は栄養士河谷さんが学生時代私が指導し、アルペンスキー経験者という経緯もあり今回皆さんの為にアルペンスキーの為の栄養学を特別に書いて頂きました。
普段学校に行っている家での食事、トレーニングしている時の食事、大会の時の食事と3項目に分かれています。
是非参考にして頂きトレーニングと食事の両立出来る素晴らしい選手になる事を祈っております。
ホップスポーツアカデミー
代表 山下太門
食事はトレーニングを後押しする!
小中学生のジュニアアスリートに必要な食事について
初めまして!太門さんに大学生時代、指導していただいておりました、
管理栄養士の河谷と申します。
ジュニアアスリートやトップアスリートをサポートしている今、昔の自分を振り返ると、反省ばかりです。
もしあの時、トレーニングを後押しする食事について知識があれば…
私のスキー歴も変わっていたかもしれません。
ジュニアアスリートの方々と、その親御様に読んでいただければ幸いです。
(公財)日本ラグビーフットボール協会 セブンズ アカデミー栄養アドバイザー/ 慶応義塾大学非常勤講師
管理栄養士 河谷彰子
1.“ごはん+おかず+野菜+乳製品”を1日3回!
これが食事の基本 筋肉づくりには、今よりご飯とおかずを食べる!

スポーツをする方の食事の基本のポイントは以下の通りです。
"3食に、
ご飯(炭水化物)+おかず(たんぱく質)+野菜(ビタミン・ミネラル)をそろえる。"
さらに小学生までは牛乳やヨーグルトの乳製品を1日2回、中学生以上は1日3回が目安です。
主食
炭水化物を多く含み、エネルギー源になる栄養素。
特にアルペンスキーでのエネルギー源は炭水化物です。
脳のエネルギー源にもなり、不足すると集中力が欠けてしまいます。
夕食から一番時間が経っている朝食の主食量は確保したいところです。
腹持ちが良い方が、集中力が長続きするため、3食の主食はご飯がお勧めです。
(シリアルよりパン、パンよりご飯の方が腹持ちが良い。)
玄米が1/3でも入っていると、なお良し!
主菜
たんぱく質を多く含み、筋肉づくりや免疫力に大切な栄養素。
起床時に体温は低くなっていますが、たんぱく質をとると
体温が高まります。
身体を目覚めさせるためにも、朝食の主菜は欠かせません。
忙しい朝は、卵と納豆でOK。
卵かけごはん・納豆かけご飯は手軽で便利!
野菜
食物繊維とビタミンCやビタミンAを多く含む。
食物繊維はお腹の調子を整え、各種ビタミンは代謝の潤滑油になる。
ビタミンA(特に緑黄色野菜に多く含む)は風邪予防のビタミンです。
1日350g以上の野菜は確保したいところ。1/2が緑黄色野菜である事が理想です。
野菜ジュースは+αと考えましょう。
野菜ジュースを飲む場合は、ビタミンA・もしくはβカロテンが多く含まれている物がお勧めです。
火が通っていても、生でもOK。忙しい朝食時であれば、具だくさんの味噌汁を夜に作っておくのも1つ。
乳製品
たんぱく質やカルシウムを多く含み、筋肉づくりや骨づくりに大切な栄養素。
牛乳アレルギーがある場合は豆乳でも良いですが、
豆乳はカルシウム量が乳製品より少ないため、カルシウムが多い食品を積極的にとる必要があります。
(カルシウムを多く含む食品例:しらす干し等の骨まで食べられる魚・サクラエビ・大根の葉・ひじき・豆腐・ほうれん草や小松菜等の青菜)
今朝の朝食は、これら4つの要素がそろっていましたか?
筋肉づくりには、炭水化物+たんぱく質が必要です。
朝食を変えるだけで、筋肉量が増える選手を多く目にしますよ。
2.ご飯量は以外と多い。
●ジュニアアスリートの1日の目安量
|
小学生 1,350~2,250kcal |
小学生高学年で運動部に所属 2,550kcal |
中学生 2750~3000kcal |
高校生 3,500~4,000kcal |
運動部なしの大人の目安 1,800kcal |
 ご飯 |
200g (6枚切り食パン2枚×3 |
250g (食パン2.5枚)×3 |
300g (食パン3枚)×3 |
350g (食パン3.5枚)×3 |
茶碗一杯 (6枚切り食パン2枚)×3 |
 卵 |
1個 |
1~2個 |
1~2個 |
2~3個 |
1個 |
 肉・魚 |
肉:50~70g 魚:1切弱 |
肉:100g 魚:1切 |
肉:200g 魚:2切弱 |
肉:200~325g 魚:2切 |
肉:100g 魚:1切 |
 乳製品 |
コップ1.5杯 |
コップ2杯 |
コップ3杯 |
コップ3~4杯 |
コップ1杯 |
 油脂類 |
大さじ1 |
大さじ2 |
大さじ3弱 |
大さじ3~4 |
大さじ1 |
 砂糖類 |
大さじ1 |
大さじ2 |
大さじ3弱 |
大さじ3~4 |
大さじ1 |
●中学生の食事例
朝 |
昼 |
補食 |
夜 |
玄米入りご飯(250g)+納豆(1P)
ハムエッグ(卵1個+ハム2枚)
ほうれん草ソテー・野菜スープ
牛乳(250cc)
|
玄米入りご飯(250g)
肉巻き野菜(豚肉80g)
厚焼き玉子(卵1個分)
野菜炒め・ひじきの炒り煮
|
サケ入りおにぎり1個 (ご飯100g)
フルーツヨーグルト (ヨーグルト100g)
|
玄米入りご飯(250g)+
味付け海苔
ぶりの照り焼き(100g)
根菜の煮物・味噌汁 (豆腐入り)
牛乳(250cc)
|
計:エネルギー:3,292kcal たんぱく質:146g |
300gのご飯は約1合です。ご飯は炭水化物を多く含む食品ですが、ご飯約250gには卵1個分に相当するたんぱく質が含まれています。
つまり、ご飯を食べる事は、トレーニングで消費したエネルギーを補給する以外にも筋肉づくりにも貢献します。
1食に300gのご飯を食べる事が出来ない場合は、補食と組み合わせて、ご飯量を確保すると良いです。
砂糖も炭水化物を多く含む食品ですが、たんぱく質は0gです。ジュース500mlには大さじ5~6杯の砂糖・スポーツドリンク500mlには大さじ2杯分の砂糖が含まれています。
ジュース類を飲みすぎると、食欲が落ちてしまい食事量が確保出来ず、筋肉が思うようにつかない事につながりかねません。菓子類も同様です。
3.ゲレンデでの食事のポイント
ゲレンデでの食事は、なかなか食事量や内容に偏りが出やすいと言えます。
持ち歩きしやすい食品を予め用意するのも1つです。
ご飯
おにぎりがお勧め!(コンビニのおにぎり1個は約200kcal)
サンドイッチも良い。
菓子パン類は砂糖や油を多く含む物が多いため、デザートの位置づけに。
(菓子パン1個は350~500kcal!)
おかず
ツナ缶等の缶詰
スーパーでも購入できるサラダチキンも便利な商品です。
ゆで卵も良いのですが、食べる前に洗いましょう。
(食中毒の原因になる可能性があるため)
野菜
野菜ジュース
乳製品
ヨーグルト トレーニング後の補食にするのも1つです。
乳製品を合宿中に確保するのは、なかなか難しいですよね。
冷蔵庫が無い場合は、スキムミルクを準備すると良いです。
お湯に溶かして飲むのも1つですし、コーヒーが好きな方は加えても良いですね。
その他
バナナ(炭水化物が多い果物)
(バナナ1本は約100kcal)
4.トレーニング中の補食のポイント
3食以外の食事を間食と言いますが、スポーツをする方々にとっては、間食は食事の一部として考えたいところです。そのため食事を補う食事、補食と考えましょう。
トレーニング時に空腹を感じた時は、炭水化物を補給しましょう。持ち歩きしやすい補食の代表はバナナです。
一方で、バー状の食品はエネルギー量の半分が脂質のため、お勧めではありません。
また、雪上でのトレーニング中の水分補給に、スポーツドリンクは良いのですが、
飲みすぎると砂糖をとりすぎてしまう事にもつながるため、水と組み合わせると良いでしょう。寒さの厳しい時には、少し温めたお茶も良いでしょう。

お菓子類は100kcalを目安にとどめておきましょう。理由は砂糖や油を多く含む物が多いためです。
アルペンスキー1時間で消費するエネルギー量は約200kcalです。
100kcalの菓子類は…
チョコレート6かけ・飴5粒・ポテトチップス10枚…
商品の後ろに表記してあるエネルギー量をチェックしてみましょう。
さて、疲れた時の甘い物でしょうか?
5.宿泊先がビュッフェスタイルの時のポイント
色々な料理が並んでいるビュッフェスタイルの食事はワクワクしますよね。選び方次第で食事のバランスが大きく左右すると言えます。
ポイントは以下の通りです。端から食べたい物を選んでいくより…
どんな料理が並んでいるか、
一回りしてみる。
ご飯・おかず・野菜を
どのような組み合わせで食べるか考える。
くれぐれも、デザートコーナーから攻める!なんて事がないようにしましょう。
また、ビュッフェスタイルの良い所は、何度もお代わりが出来るという所です。一度にたくさんの料理を並べると食欲がわかないと言う方は、少しずつ取ってきて、お代わりをしましょう。
食欲がわかない、少食で食事量が確保できづらいという方のポイントは以下の通りです。
POINT 1
ご飯と麺類等、
主食を組み合わせる。
POINT 2
ご飯の上に、
おかずを乗せた丼スタイルにする。
この方法はご自宅でもお勧めの方法です。
6.いよいよトレーニングの成果を試す大切な大会!
という時の食事のポイント
アルペンスキーの場合、特に食事面で特別な事をする必要はなく、いつもの食事で良いです。
朝食はいつも通り"ご飯+おかず+野菜+乳製品"を揃えた食事を食べましょう。
ただ、緊張で食欲がわかない・お腹が緩くなる等の症状が心配だという場合は、油に気を付けると良いでしょう。
揚げ物よりソテーした物・オイル入りのドレッシングよりノンオイルドレッシングを使用した物・クロワッサンよりロールパン・ベーコンよりハムと言った感じです。
試合直前に空腹感を感じ、何かを食べたいという場合は、トレーニング中の補食と同じで良いです。
試合の日は特別な日ではありますが、特別な事をする日ではありません。普段のトレーニングの成果を試す日なのです。
普段と同じ食事・補食・飲み物で良いのです。むしろ、試合の日に初めて試すというのは避けたいところです。
考慮するとしたら食事時間です。出走時間と食事時間が近すぎる場合は、いつもの補食内容で良いです。
また、試合の日は食事時間を確保する事が出来づらい事もあるでしょう。
その場合は"ご飯+おかず+野菜+乳製品"をそろえなくても問題ないです。
優先順位が高いのは、ご飯でエネルギー補給をするという事です。
いかがでしょう。
これまでの食生活より、一歩トレーニングを後押し
食生活を見つけられましたか?
寄稿:河谷彰子 管理栄養士
(公財)日本ラグビーフットボール協会 セブンズ アカデミー栄養アドバイザー
慶応義塾大学非常勤講師
経歴
1991年 | 3月 日本女子大学付属高等学校卒業 |
1995年 | 3月 日本女子大学家政学部食物学科管理栄養士専攻卒業。
4月 筑波大学大学院体育研究科コーチ学専攻入学 |
1997年 | 3月 筑波大学大学院体育研究科コーチ学専攻卒業。
4月 株式会社タラソシステムジャパン入社
(業務内容)海水中・陸上での運動指導、
栄養カウンセリング、食サービスの提案 |
2006年 | 3月 株式会社タラソシステムジャパン退社。
4月 株式会社レオック関東入社。
9月 株式会社レオックジャパン転籍 |
2006年~ | Jリーグ横浜FC栄養アドバイザー(ジュニアユース~トップチーム) |
2011年 | 2月 株式会社レオックジャパン退社 |
現在は、フリーの管理栄養士。
(公財)日本ラグビーフットボール協会セブンズ アカデミー栄養アドバイザー・慶応義塾大学非常勤講師・さくら整形外科クリニック管理栄養士。
ジュニアユースからトップチームまでのJリーグ選手やラグビー選手への栄養アドバイスを行う。また、生活習慣病予防・改善のための栄養相談も実施している。

河谷彰子氏のさらに詳しいプロフィールはこちら
https://www.kouenirai.com/profile/2448
※外部サイトにリンクしております。

河谷彰子氏の投稿記事はこちら
http://www.shirokawa.jp/column/category/kawatani_akiko/
※外部サイトにリンクしております。